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portfolio reviewという言葉、ポートフォリオレビューを受けるということにはどういう意味があるんだろう。ここでは、portfolio reviewの現実についてすこしシリーズで紹介しようと思う。

そもそもレビューとは、評論と訳される言葉だ。一般的には作品や論文について評価を受けて、それらが評に価するかどうか、価値があるとすればどのような価値のものとして取り扱っていくか、専門家が論じることをいう。評論の専門家とは、その分野の価値体系をもとにそれらの作品がどのような価値があるのかを判断するプロフェッショナルだ。例えば、医学論文だと、循環器科の領域の論文については循環器科の専門家がレビューし、その作者に学会誌などへの掲載ができるかどうか、できないとすればどういう理由でできないか、補って掲載が可能なものであればどういう点で書き直すべきか、適切なポイントを指摘していくものだ。では、写真における専門家とは誰だろう。一般的に、写真における専門家とは、指導的な立場にある写真家、写真についての深い知識がある学者/研究者、写真を専門とする学芸員、写真の評論家、写真を扱うギャラリー、写真集出版社、写真専門雑誌などだろう。これらは写真家あるいは作品を評価しその評価内容を論じたり、作品を社会に流していくこと、写真家と協業して写真から利益を上げたりすることに責任を負っているので、プロフェッショナルな担い手であるということができる。そしてこの担い手たちの背後には、かならず社会としての視点、コレクターや写真集愛好家などエンドユーザーが存在することを理解しておく必要がある。

では、レビューとは写真の場合どのように行われているのだろう。ここが理解できればレビューはさほど難しいことではないはずだ。美しい作品を作ることはいろいろ大変だが、レビュー自体は作品を作るほどには難しくはない。もちろん、レビューを通過して自分の作品が社会に流れていく、というところにはもっとも険しい道のりがあるのだが。

レビュワーによって評価軸がいろいろ異なることは、人間が行う分類作業だからやむを得ない。しかし、一般的に評価の基準には以下のようなものがある。

まず、もっとも大事なのはストーリーやテーマだろう。写真家としてどのような物語を誰に対して提示し、その結果をどのように見込んでいるか、この一連の思考がストーリーであり、テーマだ。多くの写真家はテーマを探してくることには熱心だが、それを誰に見せたいのか、どのような社会的評価、結果を見込んでいるのか、という部分が欠落していることが多い。この部分は、基本的には写真の評価の中で最も影響を受ける部分だ。たとえば、ある国の貧困をテーマに選ぶとする。貧困に喘ぐ人たちを撮影することは、撮影の拠点をその国に置き、ある程度その土地に根ざした活動をしていればかなうだろう。問題は、それをどこで、誰に見せるのか、という目的を自覚的に描いているかどうかだ。もっとも重要なのは、写真の制作過程にそれらの目的と、結果として描き得る評価が予測されていることだ。それが例えば、世界的なメディアであるNY Timesなどのニュースメディアに向かっているのか、ある種の評価を一般の観衆に問いかけるギャラリーでの展覧会をめざすのか、写真集好きのポピュレーションに届けたいのか。それぞれの方向性によって制作の方法がまるで異なってくるといっていい。貧困をテーマにした写真の場合、それがその国の現状を世界に知らしめることができ、そこから国際的な議論が起こるという評価を期待して作品を制作すれば、もっとも高い評価が得られる可能性が高くなる。また、その国への滞在記としてジャーナリスティックな視点で制作を続けていけば、世界的な議論は期待しなくともその国に関心のある人々に届くだろう。僕がよく見かける写真制作上の問題点は、その方向について考えが少し足りないか、万能を目指しすぎていることだ。また、先の例にたてば、他にも多数いる同じ国、貧困を扱う写真家と同じ視点で作品を作っていても浮かび上がることはない、ということを知っている必要がある。そのテーマを選ぶのであれば、より新しくより困難でより美しい方法を目指すしかない。

それがアートを目指しているものであっても、ことの理由は同じだ。アートの場合は、より美しいより新しいものを探しているコレクターを最終目標に掲げて訴えていく必要がある。アートの写真を語るときに、僕はよく「このシリーズのアートの装置は何ですか?」と問いかける。日本では、多くの人はその装置を語ることができない。しかし、欧米の写真家の場合、ほとんどの場合この装置は明示的で問いかけるまでもない。

僕がストーリーで評価するポイントは、以下の通りだ。

  • 新しい視点で社会を見つめているか
  • 社会の出来事、あるいは視覚的なモチーフを有効に使用して作品を高めているか
  • メッセージや目的を有しているか
  • 美しいか
  • 制作が実験的でなく再現性があるか
  • インパクトがあるか

 

次はインパクトについて書いてみよう。