Review Santa FeやAngkor Photo Festivalに関わっている関係で、そこに参加していた写真家のプロジェクトをいくつか六甲山国際写真祭に呼び込みました。

まず、Emmanuel Angelikas。この人はAngkor Photo Festivalで会い、Max Pamとともにいろいろ話し合った写真家です。彼の作品はかつて京都のPrinzというギャラリー、レストラン、宿泊施設をもつアート総合施設で取り扱いがあったとのこと。日本にも度々きているということで作品を一通り見せてもらいました。現在はなかり過激なSEXをモデル撮影で取り扱うなど異端の作家ですが、かつてはオーストラリアのシドニー近郊のMarrickvilleという場所で撮影した作品などで活躍した作家です。この作品が重要なのは、7歳でカメラを手にしてから現在まで、一つの街の表と裏、風景や人々、風俗をなんら制限なく踏み込んで撮影しているところです。裏通りの奇人変人、街の文化的な要素、そして移民社会の影とSEXなど、撮影する対象は限りなく、その膨大なアーカイブは感心するほどでした。大切なのは、一つの街を撮り尽くすこと。そしてそれが終わったと感じられても結局は戻ってきてさらに踏み込んで撮影しようというその姿勢なのです。六甲山国際写真祭は彼のあらゆる種類の写真を展示しようと試みました。写真とは何か。写真家とは何かを問うとき、まさに尽きない好奇心で世界を見つめることがいかに大切であるかを、彼の作品を通じて感じて欲しいと思います。

©RÚBEN SALGADO ESCUDRERO

©RÚBEN SALGADO ESCUDRERO

Ruben Salgado EscuderoもAngkor Photo Festivalで出会った写真家です。彼は現在ミャンマーの奥地で撮影をしており、主にはミャンマーの奥地に電力を供給するNPOの仕事をしています。彼のプロジェクトは単純ですが、とても重要なものです。日本製のソーラーパネルと充電池を電力供給のない村に持ち込んで、村人たちに提供します。そうするとこれまで日没後にロウソクやオイルランプの明かりしかなかった村に、夜遅くまで明かりが灯されます。彼の作品が面白いのは、住民が明かりを得たことで何が最も喜ばしいのかを表現するシーンをその蓄電装置で灯った明かりだけで撮影していることです。勉強する小学生や、サッカーに興じる人など、電力によって世界が激変した村の様子を幸福な笑顔とともに撮影しているのです。このシリーズは、ミャンマーという国の構造的な問題を電力というくくりで見せるとともに、国際社会に対してもコミュニケーションを通じて支援を要請するとても優れた作品となっており、すでにAngkor Photo Festival、六甲山国際写真祭のみならずたくさんの写真祭に引っ張りだことなっています。

©ABBEY HEPNER

©ABBEY HEPNER

Abbey Hepnerは今年のReview Santa Feで出会った写真家です。この写真祭の全体のトーンからするとどちらかというとアート寄りな作品だと思います。しかし、そのメッセージは優れたものがあります。映画でみるロボット映画はたくさんありますが、多くはフィクションで娯楽だとすぐに理解することができます、Abbeyの作品も、一見娯楽に見えるのですが、そこにはもっと深い意味が見て取れます。彼女は一時期日本に滞在したことがあり、日本のロボット技術や人々のロボットへの憧れについて非常に深い感慨があったと言います。また、医療施設で介護の現場を体験したことがあり、増え続ける介護労働力に対してロボットが有効かどうかに強い関心があります。そこで、実際にロボットと暮らすということはどういうことなのかをロボットの着ぐるみを着たご主人を撮影することで表現してみたのです。食事や観光、ナイトライフ、子供達の世話まで、空想上可能なシーンを撮影してみるのです。面白いのは、ロボットの存在感がいわゆる機械的ではなくあくまで人間的に描かれていることです。それはAbbey自身の未来図なのですが、ただ機械的にたとえば介護ロボットを作ったところで、人間の世話などできないのではないかという警告でもあるのです。

©HIROSHI IMAI

©HIROSHI IMAI

Hiroshi Imaiは東京に住む日本人写真家です。六甲山国際写真祭で取り上げた彼の作品は神戸のポートアイランドに取材したシリーズで、彼自身は六甲山国際写真祭ポートフォリオレビュー1期2期と参加してくれています。日本のまちづくりの行政は、土地の開発から企業誘致まで、バブル以降に沈んだ経済の立て直しの陰で様々な問題を抱えるに至っています。ポートアイランドは神戸方式といって六甲山以北の山を削って新たな土地を造成し、そこで生まれた土砂を使って港に人工島を建設するというかなり合理的な土地開発を行ってきました。しかし、バブルが崩壊し、震災が起こったためポートアイランドにはなかなか企業が誘致できない状態が続いたのです。震災前、また震災後に生まれた神戸市のプランでは、ポートアイランドの土地利用促進策として先進医療施設誘致、大学誘致など対策を取り、それなりに成果を上げているといいます。しかし、こういったプロジェクトで必ずといっていいほど伴わないのはまちつくりのポリシーから抜け落ちた土地をどう美しく魅力あるものにするかという思想です。今井さんはその点を鋭くついて、美的な要素を全く感じることのできない不揃いな建造物をあおり撮影で撮り、表現しています。