六甲山国際写真祭2018アフターリポート「クライエントリストを作り、エレベーターピッチに備えよ!」/ 和田芽衣

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六甲山国際写真祭2018アフターリポート「クライエントリストを作り、エレベーターピッチに備えよ!」/ 和田芽衣

六甲山国際写真祭2018 にゲストフォトグラファーの一人として、山上でのレビューワークショップにも参加された和田芽衣さんよりアフターリポートが届きましたのでご紹介します。

 

8/31と9/1の2日間、写真家たちは3つのグループに別れてワークショップに参加した。写真家たちは自分が取り組んでいるプロジェクトについてレビュアーとディスカッションをし、編集を行い、2日目の夜に開催される3分間プレゼンテーション(20枚組)に臨むワークショップだ。ただ、私のグループ“かたつむり”はそれだけではなかった。

 

<レビューを受ける>

まず、我々は他グループ同様、机に自分たちの取り組んでいる写真を並べ、レビュアーから批評を受けた。レビュアーは現在AdobeのVisual contents部門に務めるAmeber Terranova(Photo editor), Annick Shen(Photo editor)。「いつから始めたプロジェクトなのか」、「作品を通じてあなたは何を伝えたいのか」という基本的な部分から始まり、プロジェクトを成功させるために効果的な編集や要素についてアドバイスを受けた。私の場合、今年から取り組み始めたプロジェクトを持ち込み、「もっと寄り(ディテール)の写真も必要。マクロを使ってみたら?」「被写体の視線を写真で表現してみるのもよい」「生活音や動画を加えるのも良いわね」といった調子である。自分のプロジェクトについては思い入れが強かったり、見慣れてしまって新たな構成に気付くことが出来ないことが多々ある。目の肥えたレビュアーらからのアドバイスを受け再構成をすると、作品は洗練されていった。また、マンツーでのレビューではなくグループワークショップであったため、他の写真家らのプロジェクトとそれらへのアドバイスも聞くことができ、それも大変勉強になった。さらにAmberとAnnickは2日目、その豊かな経験を基に、我々一人ずつに作品作りの参考になるだろう世界の写真家を多数紹介してくれた。このグループワークショップに限らず、今回の六甲山写真祭では自分がいかに世界の作品を観ていないかという事実を突きつけられた。世界の写真家たちは、既にPhotographerからVisual Artistへと既成の枠を超えて己の表現を追求していた。写真はもっと自由であっていい、可能性に満ちたアートなのだ。さて、レビューについての話はここまで。次は、写真の売り込み先の探し方と、チャンスの掴み方について。

<Client Listを作れ>

photo editorとしてのキャリアが長いAmberとAnnickは、現在Adobeのvisual contents部門に務めている。そんな2人が、「どこへどのように作品を売り込めば良いか分からない」と迷う我々日本人写真家たちのために、「エディターが日々チェックしているサイト」を複数紹介してくれた(例:PDN/SPD/Birdman/FABRICA/aipad…ああ、書いてしまった。せめてもの意地悪でリンクは貼らない!)。雑誌はもちろん、ウェブサイトにもエディターの名前やメールアドレスは記載されている。自分の作品をレビューして貰いたい先をリストアップし(クライエントリストと言う)、あとはメール(時には郵送で)ポートフォリオを送るのだ。当然写真祭に関するサイトにもギャラリーやイベント情報がまとまっているため、チェックするのが良い。ちなみに、出版社に関しては出版物を良く見て、ブレずに狙って作品を送るのが良いそうだ。なんと具体的なテクニックだろう。このレクチャーの中でだったと思うのだが、Statementは「お年寄りに聞かせても分かるもの」とはよく言われる話だそう。文字で語りすぎるのはナンセンス。我々はvisual communicatorであるのだから、イメージで勝負しなければならない。さて、リストは出来たとしよう。では、どうメールを送ろうか。

<Elevator Pitch>

突然だが、これを読んでいるあなたは初対面の超多忙な人を相手に、30秒で自分を売り込むことができるだろうか? 初対面の相手であっても30秒で自分を売り込み覚えてもらうための挨拶のことを“Elevator Pitch”という。講師のAmberとAnnickいわく、アメリカでは一般的なテクニックとして日頃から仕事の現場では実践されているそうだ。国際写真祭では、会場だけでなく近くのカフェなどに有名メディアのエディターがいることが多々ある。ランチやパーティなどは挨拶をする格好の機会だ。こうした機会を逃さず、多忙な相手に自分を売り込むことが写真家には求められる。そのためには、日頃からスマートな自己紹介を練習していなければならない。超多忙な相手を引き止め、迂遠でつまらない自己紹介をしていては足も止めてくれないし、説明半ばで「じゃ」と帰られてしまうのだ。そう、初日のプレゼンテーションの時の私のようにね…。

<30秒、1分、30分>

まずは30秒の自己紹介だ。ここで相手が自分に興味を示してくれれば、延長戦(1分)へとチャンスが繋がる。これに成功すれば、次こそ30分…つまり自分のプロジェクトを説明するチャンスに繋がっていく。写真家はこの3つの自己紹介パターンを日頃から練習しておくべし、というのが講師からのアドバイスだった。我々は実際に2人1組になり、30秒の自己紹介を練習した。抑えるべきポイントは“相手への挨拶”、“自分の名前”、“取り組んでいるプロジェクト”、“なぜ作品を見て欲しいのか”。これらを盛り込み、連絡先交換にこぎつける。当然、相手が海外のレビュアーなどであるならば、これを英語で伝える。練習は日本語で良いにも関わらず、私は酷く緊張して苦戦した。これをスマートにこなしたのはスコットランドから参加した写真家だった。ポケットに手を突っ込みながら笑顔で相手に近寄り、見事連絡先を交換した彼のレベルに到達するには相当の訓練が必要だ!(ちなみに彼は、作品展示をしていた写真家に別の場所で出会い挨拶をするというシチュエーションでロールプレイを行なった。)日本人でも見事なElevator Pitchを見せたのは、元商社に勤めていた男性の写真家。さすが仕事柄だろうか…実に落ち着いて30秒間に必要な要素を入れ込んでいた。2人とも、慣れのレベルが違った。なお、対面での挨拶だけでなく、このElevator Pitchはメールでも同様に使えるテクニックだそうだ。チャンスの掴み方について惜しみなく教えてくれたAmber とAnnickに心からお礼を伝えたい。ありがとう。

 

12歳の時たまたま始めた写真がこれほど可能性に満ちたパワフルなアートだということを、この夏まで知らなかった。私は自分が写真家であることをこれほど誇りに思ったことはない。それほど素晴らしい時間だった。これからも世界中の素晴らしいアーティストやレビュアーらと、この六甲での日々のように刺激的な対話を続けて行きたいと強く思う。だから、英語が苦手だから、子どもが病気だからと言い訳することを止めると自分に誓った。主催者であるRAIECの杉山さんには感謝しかありません。本当にありがとうございました。「つべこべ言わずに結果(作品)で勝負しろ」と幻聴が聞こえる…ぎゃー!来年、リベンジさせてください。

2018-09-22T15:30:04+00:00

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