Mei Houseワークショップで見えたもの

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Mei Houseワークショップで見えたもの

2月19日から21日、2泊3日のワークショップが六甲山Mei Houseにて開催されました。

今回は写真のテーマの見つけ方、写真編集の大切さと実践、ステートメントの作り方、そして出版の仕組みなど、内容的には非常に盛りだくさんのワークショップだったと思います。かなりハードスケジュールでしたが、参加者の体調を見ながら、無事に全セッションを終えることができました。

昨今、写真に関するワークショップが多岐にわたり開催される中、僕としては六甲山のMei Houseを舞台に、国内にはない特徴のあるワークショップ内容を組み立てるのに腐心したわけですが、アメリカからAmber Terranova氏という六甲山国際写真祭のポートフォリオレビュー、ワークショップでおなじみの写真編集者、そしてここまで3ヶ月間日本で東北地方の震災後の取材を続けてきたMichel Huneault氏、パーソナルワークを立て続けに3冊写真集にまとめて出版している藤原敦氏、Getty Imagesのニュース編集者Yuki Tanaka氏、コミュニケーションの講師として福岡大学のTim Cross氏を呼び、台湾からの参加を含む9名の参加者とともに写真についての活発なディスカッションをしました。

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特に、Amberが提示したアメリカミシガン州Flintという街を舞台にした地域コミュニティの光と影、さらに最近話題になった川の汚染問題にさまざまな形で関わりながら撮影する写真家の物語の作り方が非常に面白く、おそらく国内の写真家の視点にはない被写体へのアプローチとストーリーの組み立て方、そして作品の提示方法など、参加者のみならずあらゆる関係者が度肝を抜かれる内容だったと思います。それはもはや写真という枠を超えて、メディアという枠のもっとも先端の尖ったトゲのようなリアリティーのある物語で、みたものの胸に鋭利に突き刺さるようなストーリーでした。

Amberの企みは、写真という枠にとらわれるのか、その枠の向こうに突き抜けるのか、というメディアのありかたの大前提について問うことだったと思います。すでにアメリカでは写真から動画や360度全天球、VRにシフトするアーティストが出始めていて、写真とともに動画を用いてインスタレーションを試みたり、VRなどの作品を並列して展示するなどの方法論についての議論が活発です。従来の展覧会、出版をこえて、すでによりリッチなメディアとして公開する大きなプロジェクトがあちらこちらで動いていて、そういうところにより大きな資金が集まり始めています。個人的に見せてもらった現在動き出しているプロジェクトでは、プロデューサー、アートディレクター、写真家、編集者、音楽家、デザイナーなどがチームを組み、資金集めチームと協業してプロジェクトを進めていく新しいメディアを創設しようとしていて、おそらく現在の出版の賑やかしさなども遠く置き去りにされていくのではないかと考えられるほどリッチで高品位なメディアに育っていくと考えられます。

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今回、直前に参加が決まったMichelもそういう写真家の一人です。彼は2013年7月にカナダのLac-Méganticという小さな街で起こった列車事故と、その列車事故が不幸な事故にとどまらず原油を輸送していたことから大きな火災を発生させ、さらにその原油が違法な積載物であることがのちに明らかにされ、土壌や近くの川を汚染させた一連の出来事を取材したシリーズを見せてくれました。列車事故だけでも悲惨であったはずのものが、環境破壊などといったスケールに発展し、平和な町が瞬く間に修羅場と化した事実について、写真家は事故の一報をニュースで知ると、わずか20時間で現地入りし撮影を続けてきました。その後何日間も取材し、息子を亡くしたという父親のインタビューや、町を覆うように作られた奇妙なフェンスを取材し、そしてその後の町の移り変わりなどについても繰り返し繰り返し取材したといいます。この作家も写真にとどまることなく、音声やビデオを使ったインスタレーションを試みていて、写真をよりリッチななメディアに押し上げて発表しているのが特徴でした。

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2日目、参加者のプロジェクトがプレゼンされました。参加者は思い思いに自分の作品について話すよう促されるのですが、ここでは日本の、特にこういったプレゼンテーションに不慣れな方特有の説明の足りなさ、感覚的情緒的説明、写真からはうかがい知れない事象への言及などが多く見られました。それが最終日にどのような変化を遂げるのか、というのが今回のワークショップの主眼であるわけで、その後にGetty Imagesの田中さんからニュース素材の編集の仕事、Amberが参加者の作品を編集するというセッション、またコミュニケーションを通じて自分の作品を客観的に眺め、編集を取り入れた作品の選び直しを求めるなどのコメントや意見が交わされました。

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夜には藤原さんに3つの出版プロジェクトの編集過程を講義をいただきました。藤原さんには、故長谷川明さんと出版したAsphaltのシリーズの編集プロセス、また自身の3つの写真集の編集について、ユーモアを交えて話していただきました。彼は編集そのものは編集者に任せていて、編集されて返ってきた作品を見ることで客観的な地平から自分の作品を見直していくというプロセスが自分には合っている、ということでした。AmberもMichelも基本的にはそれに同意的で、他者の視点を置くことで写真家は冷静になれるし、誰に提示されるべきか、どう提示していきたいのか、という視点が加わることは何より大切だと話していました。

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さらに、出版のプロセスに欠かせない知識を得る場として、印刷所のマネージメントを行う京都・サンエムカラーの飯田さんに講義をいただきました。カラーマネージメント、オフセット印刷の原理を、実際にインクを載せる刷版やカラープルーフ原稿を持参していただきわかりやすく講義をしていただきました。特に、カラーマネージメントの困難さについて、「コンピューターのモニタ画面を見てこの色が欲しい」といくら求めたとしても、実際の色の解釈があらゆるデバイス間で翻訳されて渡されるという現実から、同じ色に整えられることはほぼないため、写真集の場合はプリントとは異なった製作物であると割り切っていく必要があると話されていました。

3日目、参加者の2回目のプレゼンテーションがありました。3日間の学びから編集とステートメントを改良してプレゼンテーションに臨みました。多くの参加者は、より客観的でシンプルなステートメント、さらにいくらか写真を入れ替えてプレゼンテーションをしていました。その結果、より写真についての理解が進み、その後AmberやMichelからコメントやアドバイスを受ける機会が増えてました。

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Mei Houseでの3日間を終えて、どのような印象を受けたのかAmberとMichelに翌日尋ねてみました。ワークショップ自体は、アメリカではジャーナリズムのワークショップに近く、基本的な要素組み立てを含むなど、初心者にも上級者にも有効な方法をとったワークショップとの印象をもったということです。さらに、日本人のプレゼンテーションが独特で、私的で感覚的、信仰的、抽象的な用語が多いことに驚いていました。また、参加者全体に共通する問題点として、選ばれた写真にばらつきがあり、それぞれが強くないため何を伝えたいのかわからないケースが多かったが、2度目のプレゼンテーションでは多くは改善されていて、編集を変えるだけで見違える作品が多かったとのこと。つまり、やはりより客観的な他者からの指摘に応えていく形で写真のメッセージを磨いていくと、写真のストーリーはもっと効果的に伝わっていくのではないか、ということでした。世界的な写真への理解が足りない点への言及もありました。

3日間、びっしりと詰まったワークショップでしたが、参加者の皆さん、ご苦労様でした。これからもMei Houseの写真プログラムは、国内にないワークショップを六甲山や東京で試みていきます。特に、写真表現にとどまらず、今後発展していく可能性のあるメディアの手法を取り入れた世界最先端の表現方法などの検討を、NYに本拠を置くプロジェクトと共同で開発していく予定です。

2016-02-23T03:36:44+00:00

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