– Symposium 2017

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– Symposium 20172017-08-14T13:57:12+00:00

新・視覚芸術研究会 教育部会

-写真教育に関する問題提起とディスカッション-

2017年8月19日(土)午後2時から6時

会場:C.A.P.芸術と計画会議 2階ミーティングルーム

概要

“写真は、現代においてももっとも重要なメディアでありアートである”。この一言が真か偽かについて語るのは簡単ではないが、それは写真がいかに重要であるかということを、写真が現代社会において果たしている役割について社会がどの程度その役割に依存し、写真の大切さを認識しているのかという尺度から判断する良い研究や指標がないからだ。しかし、写真はおそらく世界に溢れる情報ネットワーク、つまりテレビや新聞、雑誌やウェブメディア、SNSなどの現代人の情報源のくくりの中では群を抜いて「見られている」視覚情報であり、それについて疑いをさし挟む余地はないだろう。それをもって先の一言には一定の信ぴょう性があると判断する他にない。

しかし、仮に写真が現代におけるもっとも重要なメディアでありアートだとしても、そんな一言を一般社会がいちいち取り上げて話題にすることもそうはないだろう。写真は、水のようにそこに存在しただ流れていくだけで、それが重要かどうかは意識の向こうに追いやられて、ほとんどの人はその重要性や役割を意識することはないだろう。写真は、写真に何らかの形で関わっている人、SNSで自身の暮らしを切り売りする人たちにとっては重要ではあるが、そうでない人たちにとっては日々触れるものごとの微かな一部にすぎないわけだ。

写真をメディアやアート作品として制作し発表するいわゆる「写真家」は増加の一途をたどる。しかし、「写真」をめぐる価値創造のプロセスはここ日本では機能しているとは言えない。こと写真集の発行数だけみると、おそらく世界でもっとも多くのものが制作されていると思われるが、写真集の発行部数についてどこか公的機関が公式に調査し発表しているとは聞かないし、写真研究もそのようなことをテーマにしているとは聞かない。写真のマーケット、つまりプリントベースの販売枚数も、ギャラリーが公表しているということはないし、アメリカのようにアート産業の売上総額が公表されるような年次経済動向にアート産業が数字を出しているという話も聞かない。つまり、この国では「写真」を撮影している「写真家」が、カメラメーカーなどの産業と関わったり関わらなかったりしながら、価値創造という思考を経ないまま、あるいは全くそれぞれ個別・独自の価値観で作品を制作していると考えられるのである。多くの写真家は、慎ましやかな自身の「作品」が社会にとってどれほど重要かを意識することなく発表する。つまり、その作品なり問いかけは社会にとって重要か重要でないかという通過地点をいちども経由せずに、社会の評価をそもそも受けることなくただそこに産み落とされるだけなのである。

写真における価値の創造とは何か。それは作り手と受け手の双方を、教育を通じて育てることである。作り手と受け手の双方が、意識下に写真を置き、写真の真の意味を理解することである。

RAIECでは、「写真教育に関する問題提起とディスカッション」と題して、第4回新・視覚芸術研究会において、初めての教育部会シンポジウムを開催します。

今回のシンポジウムでは、RAIECと同じく東京でT3 Photo Festivalを主宰する速水惟広さん、現代アートのマーケティングを研究されている慶應大学大学院の和佐野有紀さんをパネリストに迎えて、RAIECの杉山武毅と意見交換しながら、写真・写真家教育をめぐる問題点についてディスカッションします。

パネリスト

速水惟広 T3 Photo Festival代表

T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO(東京国際写真祭)コーファウンダー/クリエイティブディレクター。国内では、岩手県大槌町や、静岡県下田市にて地域住民とアーティストによる写真を使ったソーシャル活動に力をいれている。その一方で、フォトディレクターとして海外の写真フェスティバルなどでも精力的に活動をしており、最近では「PHMUSEUM GRANT 2017」(Photographic Museum of Humanity)審査員、「Latin American Photography Forum」(サンパウロ、2016)ゲストレビュアー、「FOTOGRAFICA BOGOTA」(コロンビア, 2015)での講演などがある。過去、手掛けた主な企画展にアレハンドロ・チャスキエルベルグ「Otsuchi Future Memories」(岩手県大槌町、2016)、アレックス・プレガー「WEEK-END」(東京、2010)など。写真雑誌「PHaT PHOTO」前編集長。

シンポジウムでは、「日本の写真・写真家に足りないこと」について話題にしたいと思います。

 

 

和佐野有紀 慶應大学大学院前期博士課程美学美術史 アートマネジメント専攻

最近ネット版Newsweek上で話題になっていた現代アート採点法なるものを御存じだろうか?まだまだ価値がさだまらず、わかりにくいと捉えられがちな現代アートを鑑賞者各々が評価するために、7種の創作動機(①新しい視覚・感覚の追及②メディウムの探求③制度への言及と異議④アクチュアリティと政治⑤思想・哲学・世界認識⑥私と世界・記憶・歴史・共同体⑦エロス・タナトス・聖性)に⑧完成度と補助線を加えた8項目における作家動機の強さ(推定)と鑑賞者各々の評価をレーダーチャート化するという提案が物議をかもした。現代アートとは、そもそも同時代を生きるアーティストによる、同時代性をはらむ内容の、表現と鑑賞の同時進行性を伴う特殊な表現であり、その現代性ゆえに既存のルールや定型的な見方は定められておらず、現代アートをどのように鑑賞するのか、どのように好きになるのかは、鑑賞者の手腕によるところが大きいのが現実である。しかし写真を含む現代アートの鑑賞者教育は日本においてまだまだ充分とはいえず、それらのマーケットは世界的に見ても小さく、未成熟なものであると考えられる。

今回、日本の現代アートマーケットにおいて既にコレクターとして活動する鑑賞者の目を通して、今、日本の現代アートにどのようなものが求められるのかを、直近に行ったリサーチ結果を元にお話しし、特に現代アート鑑賞者が写真をメディアとする現代アートを購入する際に、どのような点を重視するのかについて触れていきたい。

 

 

杉山武毅 RAIEC / Mt.ROKKO INTERNATIONAL PHOTO FESTIVAL主宰

写真・写真家・写真周辺について理解するためには、写真の現状について、できるだけ丁寧に情報収集し、分析する必要があります。ある写真家が作品を作る際、何について、どういった作品をどう制作し、どうまとめどう発表するか、というプロセスがとても大切なのですが、「写真」とはそもそもどういったメディアで、歴史的にはどのような写真家が好まれてきたのか、現代の写真の世界でどのような作品が評価されているか、ということも知っておく必要があります。ところが、日本で作品を制作している多くの写真家は、写真についての情報収集が足りないように思います。このディスカッションでは、今年の3月4月に国内の写真家に対して行った写真家意識調査の結果をふまえ、写真・写真家教育の重要性について検討しましたので、その調査からみえる国内の写真・写真家・写真周辺の問題点について発表しディスカッションしたいと思います。